ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」全曲カラス(マリア)
東芝EMI
発売日 2002-09-11
カラス、カラヤン、スカラ座。この3者が一同に会した唯一の貴重な録音(1956年8月)であるばかりでなく、永遠に讃えられるべき名演である。腸が煮えくり返るような怒りと復讐、命を賭けた恋と嫉妬。情念の歌がぶつかりあい荒れ狂うこの稀有(けう)の傑作オペラが、なんとまばゆく輝いていることだろう。好条件のセッション録音であり、ARTリマスタリングのおかげで、モノラルながら音質も大変鮮明に美しくよみがえっている。
ここでのカラスの歌は絶好調。第1幕第2場のアリア「ああ、いとしいわが恋人よ」からして、恋する女の熱い心情はあふれんばかりに流れ出す。カラスのレオノーラには、ねっとりとした女の「業」のようなものさえ感じさせる凄みがある。若きカラヤンの指揮は、はちきれんばかりの生気と歌心に満ちており、スカラ座管弦楽団&合唱団の天駆ける駿馬のような風情、微細な局面でも脈動するリズムの生命力がたまらない。パネライのルーナ伯爵の威厳と熱い心、ザッカリアのフェランドの凄みのある豪腕隊長ぶり、そしてディ・ステファノの血気盛んで若々しい吟遊詩人マンリーコ、バルビエリの母性愛と憎悪に引き裂かれたジプシー老婆アズチェーナ。キャストもみな素晴らしく、黄金期のスカラ座の威力には感嘆するほかない。まさに血が沸き立つような「トロヴァトーレ」である。(林田直樹)
聴き処たくさん☆ブイヨンのような1枚 2003-02-08
マリア・カラスは勿論、テノールのディ=ステファノ(のちのカラスの愛人)が、パヴァロッティ顔負けのハイ・トーンを色っぽく披露しているをはじめ、その他の歌手も決して歌い負けていない。全体的にバランスが良く、有名な曲『鍛冶屋のうた』などもよい。表紙のカラスののコスチューム姿も美しい、お薦めの作品。
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