ヴェルディ:歌劇「椿姫」全曲カラス(マリア)
東芝EMI
発売日 1997-10-22
絶頂期のカラス、そしてスカラ座がいかにすごかったかをまざまざと思い知らされる衝撃的な伝説のライヴである。まず冒頭の前奏曲からして凡百の演奏とは熱気が違う。若き名指揮者ジュリーニのたぎるような情熱がもう沸騰寸前。そして、前奏曲が終わると嵐のような拍手! おそらく、幕が開いた瞬間、観衆があのルキノ・ヴィスコンティ演出の豪奢なリアリズムあふれる舞台美術に圧倒されたのだろう。
第1幕の最後、カラスの歌うヴェルディ屈指の名アリア「ああ、そはかの人か」は命を賭けた絶唱ともいうべきすさまじい出来で、最後の最高音の伸ばし方など何度聴いても魂を揺さぶられずにはいられない。往年の名バリトン、バスティアニーニの「プロヴァンスの海と陸」といい、ディ・ステファノのアルフレードが札束を叩き付けて賭博場でヴィオレッタを侮辱するシーンのど迫力といい、劇場全体が熱く燃えている。
1955年ライヴ録音なので音は悪いが、そんなことはどうでもよくなってしまうほど、この演奏には強烈なリアリティがある。最後の死のシーンなど、何度聴いても泣ける。カラスを語るうえでは絶対に忘れることのできない、必聴の演奏記録である。(林田直樹)
正統派「椿姫」 2004-01-01
僕が一番好きなのは、クライバー、コトルバス、ドミンゴの録音ですがこちらは少し異色なもので、ややこってりしていて、人生経験豊富な人物達の「椿姫」である。しかし、このジュリーニ盤は本当に若い。カラスのコロラトゥーラは凄いし、高音も楽々である。ヴィオレッタ=カラスとまで言っていいだろう。そしてディ・ステファノは相変わらずの甘い声で歌っている。うっとりする。そして父・ジェルモンのバスティアニーニがまた素晴らしく、言うことがない。
録音状況はお世辞でもいいとは言えないが臨場感たっぷりで伝わってくるものがある。アリア後の歓声は鳥肌ものである。
しかしオペラを始める人にはもっといい録音のものをおすすめします。悪しからず。
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