マリア・カラス ミレニアム・ベストカラス(マリア)
東芝EMI
発売日 2000-10-18
マリア・カラスのおいしいところを1枚に収めてしまおうという、もしかしたら無理なことをやっているCD。一部フェイド・アウトされている部分があり、そのことに文句をつける人もいるらしいが、やはり1枚で大体のところが分かるというのはうれしい。「オペラには興味がないけど、カラスだけはいいね」という人がいる。おそらく何かの機会にこのCDを耳にして同様のことを思う門外漢がたくさんいることだろう。音質もいいし、選曲もビゼーやプッチーニの超有名曲が中心なので、だれにでも安心して勧められる入門盤だ。50頁を超えるブックレットが付いているのもセールス・ポイント。評論家のエッセイがいくつか、年譜、収録曲の紹介と歌詞対訳 、さらに豊富な写真が掲載されている。(松本泰樹)
不世出の「20世紀最高のソプラノ」 2006-10-07
このアルバムは、マリア・カラスの全盛期とも言える1950年代後半の歌唱を中心に有名なアリアを20曲収録しています。名曲アリア集という色彩も帯びているのでしょうか。
50年以上前の録音もありますから、モノラル録音のものが多いわけですが、その歌の本質は全く変わりませんし、リスナーにはマリア・カラスの偉大さがはっきりと伝わってきます。EMIのデジタル・リマスター・システムによって高音質で繊細な録音が再現され、より良い音で聴けることによってその歌声も現在に蘇りました。
マリア・カラスの表現力はやはり格別です。若い頃のリリコ・スピントから年代を経るにつれ、ドラマティコの声質に変化し、その得意とする役どころも少しずつ変化していきました。
ソプラノよりも少し重い声質で、メゾのような響きを持っていますが、全盛期の高音の伸びは、紛れもない不世出のソプラノだったのがよくわかるCDでした。
ラストのプッチーニ作曲の歌劇「トスカ」の有名な「歌に生き,恋に生き」は、気心のしれているプレートル指揮によるもので、1964年の演奏ですので、本来なら声の調子が衰えていった頃なのですが、その気迫と歌心は全盛期と変わらない素晴らしいものでした。
ドニゼッティ作曲の歌劇「ランメルモールのルチア」の「苦い涙をそそいで(狂乱の場)」のようなコロラトューラ・ソプラノとしての力が試されるアリアも平然としてこなすあたりからも、今更ながら幅広い表現力を備えたソプラノであったのは間違いありません。細かいパッセージを正確な音程で歌い上げ、役柄の内面に潜む感情の機微を技術に裏打ちされた声で伝える表現力があり、今聴いても色あせることはない名演奏です。
歌劇「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」のアリアがフェイド・アウトされていますが、出来ればもう少し伸ばして収録して欲しかったですね。
美しいマリア・カラスの様々なステージでの姿や、その生涯、詳しい曲目解説・対訳が収めてある50数頁のブックレットと別だての演奏データがついていますので、マリア・カラスの足跡を辿るにはとてもありがたい編集となっています。
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